- 2014-01-02 (木) 12:56
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昨年の刑事弁護を振り返りますと,なぜか,被疑者(起訴前)の弁護人になったが不起訴となる場合とある程度長期に渡って裁判員裁判に携わる場合のどちらかになることが多かった一年でした。
不起訴で終わる事件では,自分の行った刑事弁護活動と不起訴との関連がどうだったのか,例えば判決文のような形では現れてはきません。ただ,身体拘束(逮捕・勾留)を受けたご本人にとっては,早期の釈放に勝る喜びはないといっても過言ではなく,因果関係はどうあれ結果を残せたこと自体はうれしく感じられることです。
裁判員裁判では悪戦苦闘の日々が続いております。精神障碍(注1)のある被告人の事件では,専門家の協力を得て,更生のための具体的計画まで示して,執行猶予を目指したのですが,結果は実刑判決(刑務所に入る)で,しかも“8割判決”(判決が検察官の求刑年数の8割くらいになることを指して言われる言葉)した。余談(といっていいかどうか分かりませんが)ですが,公判中よくお休みになる裁判員がいて,私の最終弁論でもしっかり船を漕いでいらっしゃったのですが,やはり何か(法廷で事実上指摘,正式に解任請求など)しておくべきだったか…とも思いました。
それはとにかく,これまでにも障碍のある被疑者・被告人の弁護人を担当することが結構ありました。その人の障碍を踏まえた支援が行われていれば犯罪には至らなかったのではないかというケースもありました。
こうしたケースでは,刑事司法の過程(捜査→逮捕・勾留→不起訴/起訴→公判→判決)を終えた後,どのように(福祉的)支援につなぐかも,重要な刑事弁護活動として位置づける認識が広がってきていると思います。
この点に関連して,昨年11月,長崎県にある雲仙コロニー(南高愛隣会)(注2)を見学させていただく機会がありました。罪を犯した障碍者や高齢者の支援については,長崎で全国に先駆けてモデルが作られているのですが,先進的な取り組みにやはり感服することしきりでした。
ただ,担当した被疑者・被告人に障碍があることが分からないケースもあり得ます(精神疾患があるのに通院歴がない人もいますし,知的障碍があるのに福祉につながっていない人もいます)。
昨年末(12月28日以降)の報道によれば,認知症の高齢者2人による窃盗事件(共犯ではなくそれぞれ別に起きた事件)について,いずれも12月に大阪地検堺支部の検察官が公訴を取り消したそうですが,これも法曹の無知を示す例と思います。
福祉や医療については法曹(裁判官・検察官・弁護士)も素人というべきであって,謙虚な姿勢が必要だと思います。上の堺支部の件は検察官に対する厳しい非難が向けられて当然かと思いますが,私もこれを他山の石として取り組まなければならないと感じました。
(注1)「碍」が当用漢字(現在は常用漢字)に入らなかったためか,「障害」の表記が一般的になってしまいましたが,最近では「障がい」と表記することが増えています。ただ,私は熟語を漢字+ひらがなで書くことはどうも違和感があります。
(注2)南高愛隣会のWEBサイトは http://www.airinkai.or.jp/index.html
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